女優の小雪さんが出産後、韓国の産後ケア施設を利用したことで、多くの女性から注目されるようになった産後ケア。
日本でもさまざまなケア施設ができて利用する女性が増えてきましたが、実際のところ、海外の産後ケア事情が気になるという人も多いのではないでしょうか。
今回は、台湾と韓国にスポットを当てて産後のケア事情を調べてみました。
台湾の産後ケア事情
台湾では、産後1か月くらいは「冷たいものを食べない・飲まない」「外出しない」「洗髪をしない」「麻油鶏という薬膳スープを毎日飲む」などの習慣を守って生活をする女性が多くいます。
台湾には、日本の「産後の肥立ち」と似ている「坐月子(ズオ ユエズ)」と呼ばれる休養期間があり、しっかり体を休めると更年期障害が少なくなるともいわれています。
では、台湾の女性は、この「坐月子」の期間はどのようにして過ごすのでしょうか。
「月子中心」(産後ケア施設)で過ごす
台湾では、「月子中心」(ユエズジョシン)と呼ばれる産後ケア施設で過ごす女性も多くいます。病院付属の施設と独立した施設の2種類ありますが、いずれもホテルのように快適な部屋で過ごすことができます。
月子中心では、基本的に1日5回の産後ケア専用の食事が提供されますが、これは、栄養たっぷりの3回食事と薬膳スープ、おやつからなっています。
赤ちゃんの世話は、資格を持った看護師が新生児室で見ていて授乳の時間になると部屋に連れてきてくれます。夜もゆっくり寝たいと思ったら、夜間授乳を看護師にお任せできます。
もちろん、赤ちゃんに会いたいときは、いつでも新生児室に行くこともできますし、ママの部屋で赤ちゃんと過ごすこともできます。
ほかにも、小児科医や漢方医の回診、美容師が洗髪してくれるヘッドスパやボディーマッサージ・ヨガ・ベビーマッサージ・母親教室などがあります。
施設によって提供するサービスの違いはありますが、いずれにしても至れり尽くせりで、赤ちゃんを産んだばかりで疲れているママが、気兼ねなく休むことに専念できる場所です。
体を休めながら赤ちゃんとの時間も大切にできる産後ケア施設で、ママの負担を大きく減らしてくれるでしょう。
「月子中心」の費用
ママと赤ちゃんにとって至れり尽くせりの「月子中心」の入院費は、一般的に日本円で17,500円~35,000円程度(1泊2日)といわれています。
これは、日本の産後ケア施設と同じくらいの金額ですが、台湾の生活基準で考えるとかなり高額です。しかし、もともと産褥(さんじょく)期の世話は両親の親がするという考えがあるため、入院費を親が援助するパターンが多いようです。
「月子保母」(産後ヘルパー)に頼む
上に子どもがいるなどの事情から月子中心に入院できない場合は、「月子保母」(ズオ ユエズ)に依頼することもできます。月子保母は、家まで来てくれてママと赤ちゃんの世話をしてくれる産後ケアシッターです。
主に母乳ケアや子宮収縮を助けるマッサージ・栄養を補助する飲み物作り・体を拭くためのしょうが湯作りなどの産後ケアを始め、赤ちゃんのマッサージや運動の補助、授乳、沐浴(もくよく)、おむつ替えなどの新生児ケア、ママと家族の食事(1日3回とおやつ2回)を行います。
ほかにも、食材の買い出し・ママと新生児の衣服の洗濯・産後ケア用の部屋とバスルームの掃除など、出産後にママがしなくてはならない家事を代わりにやってくれます。
もちろん、派遣会社によってサービスの内容は違いますが、産後ケア施設と同様に至れり尽くせりの対応でママとしてはうれしい限りですね。
また、施設ではなく家族のいる自宅でケアしてくれるので、シッターを依頼した期間が終わってもスムーズに元の生活に入れるメリットがあります。
「月子保母」の費用
月子保母の費用は、1日9時間と24時間泊まり込みの場合で違います。
ただし、1日9時間(休憩1時間)でお願いすると1日9,000~10,000円程度、24時間泊まり込み(休憩2時間)の場合は1日13,000円~15,000円程度と、「月子中心」よりも費用を抑えられます(食材費など、買い物などでかかる費用は別です。)
韓国の産後ケア事情
韓国の産後ケアは、「世界で一番ではないか」といわれるほど手厚いケアをしていることで有名です。では、韓国の産後ケア事情は、どのようになっているのでしょうか。
「産後調理院」(産後ケア施設)で過ごす
「産後調理院」(チョリウォン)とは、ママの産後ケアに重点を置いた施設で、食事の提供はもちろん、マッサージやヨガなどの母体ケア、赤ちゃんとママの身の回りの世話まですべて行います。
施設によって違いはありますが、午前と午後の2回の赤ちゃんと同室タイムと授乳時間、1日3回の食事と2回のおやつの時間以外は、基本的に何をしていてもOKです。
例えば、マッサージやエステ・骨盤管理・ヨガ・沐浴・手芸などの母体ケアや体験教室に参加できますし、部屋でのんびりと過ごすこともできます。
授乳時間になると、確認の電話があってママが了解すると赤ちゃんを連れてきてくれます。もし、夜もゆっくり寝たいのであれば、夜中の授乳はスタッフにお任せすることも。
1日で赤ちゃんに会える回数を決めている施設もありますが、新生児室にはカメラが付いていてアプリから赤ちゃんの様子を見ることもできるので安心です。
また、外出届を出せば外出できるほか、家族が一緒に食事をすることや泊まっていくこともできるので、家族と一緒にゆっくりと過ごすこともできます。
食事は、韓国料理がメインで産後の子宮収縮に効果があるといわれているわかめスープが必ずといっても良いほど出てきます。
産後調理院は、「お姫様になったような気分だった」というほど、スタッフから手厚いケアが受けられるとして、産後のママに必要とされている施設です。
「産後調理院」の費用
とにかく至れり尽くせりの産後調理院の一般的な滞在日数は2週間で、費用はソウル市内の産後調理院一般室で約21万円、特別室で26万円程度となっています。
産後調理院の競争は年々過熱傾向にあり、2週間の滞在で約80万円になる施設もあるほどです。都会ほど費用が高く、地方へ行くほど安くなる傾向にあります。
「トウミアジュンマ」(産後ヘルパー)に依頼する
出産後は、産後調理院に行かず、「トウミアジュンマ」という産後ヘルパーにお願いする人もいます。トウミアジュンマはママの自宅に出向いて産後の育児やママのケア、家事をしてくれます。
トウミアジュンマは、乳房・腹部のマッサージや栄養学、衛生管理、新生児のケアなどの専門的な知識を持っていて、ママや赤ちゃんのお世話をしてくれます。
基本的には、赤ちゃんのお世話や食事・洗濯・掃除・上の子がいる場合はその子どもの世話などを行ってくれるので、自宅にいてもママはゆっくり体を休めることができます。
「トウミアジュンマ」の費用
トウミアジュンマを派遣する会社によって費用は変わりますが、例えば2週間で約6~7万円というところもあれば、週5日9時~18時まで約9万円というところもあります。いずれにしても、産後調理院よりかかる費用は少ないです。
また、トウミアジュンマは、申請すれば産後2週間を上限に国から補助が出るため、産後調理院ではなくトウミアジュンマを利用する人も多いのです。
まとめ
韓国と台湾、日本の産後ケアを比較してみると、同じアジアでもケア内容の違いに驚きますが、近年は、日本でもホスピタリティあふれる産後ケアを受けることができる施設や施設が増えてきました。
産後は里帰りをして体を休めるのが日本のやり方でした。確かに、日中は、赤ちゃんの世話をお願いしてゆっくりすることもできますが、夜間の授乳は、やはりママの仕事になってしまいます。また、実家でゆっくりするとはいっても、どうしても家事をしてしまうこともあるでしょう。
さらに、今はコロナ禍で、実家に帰ったり、親に来てもらったりすることが難しい状況にあります。産後、家事と育児が待っている自宅は休息に適した場所とは言えません。日本でも韓国や台湾と同じように産後ケア施設を利用してゆっくり体を休めるのがママと赤ちゃんにとってベストな方法といえます。
1年近い妊娠生活、出産、そして、しばらく続く子育てを乗り切るためにも、必要な休暇として産後ケア施設を活用してみてはいかがでしょうか。大変な時期を産後ケア施設で過ごすことで、体も回復でき、ママのペースで赤ちゃんとの生活に慣れていくと思いますよ。