「出産はママにとって命がけ」とはよく耳にするフレーズですよね。出産に苦労しなかったという方であっても、少なからず体にダメージは受けているでしょう。
そんな出産で無事に赤ちゃんを産み、心身とも疲労困憊しているママにとって強い味方である「産後ケア施設」または「産後ケアホテル」をご存じですか?
出産で頑張ったママにこそ知ってほしい「産後ケア施設」「産後ケアホテル」について、今回は、赤ちゃんを産んだ後に受けられる産後ケア施設の内容と役割、受けられるケア、サービスなどについて解説します。
産後ケア施設、産後ケアホテルって?
以前の日本では、出産が近くなると里帰りをして1ヵ月ほど滞在するのが一般的でした。
実家で過ごす1ヵ月で出産後の体を労り、子育てをサポートしてもらいながら育児への自信もつけていきました。
しかし、現代では、おばあちゃんおじいちゃん世代も現役で働いていることも多く、身近にサポートを頼める人がいないという状況も増えてきています。
そこで、注目されているのが産後ケア施設です。産後ケア施設とは、出産直後から3ヵ月程度を目安として、ママの精神的、身体的な回復を目指し、健やかな育児ができるようにサポートする施設のことです。
地域によっては「産後ケアセンター」とも呼ばれています。また、最近では「産後ケアホテル」として運営されている施設もあります。これに加えて、産後ケア施設として、産後院もあり妊産婦から注目を集めています。
産後ケア施設の役割
妊産婦さんは、妊娠から出産後の生活まで、体だけでなく精神的、生活環境などが大きく変わってしまうことに不安を感じています。また「ちゃんと子どもを育てていけるだろうか」という今後の子育てについても不安に感じる場面もあるでしょう。
そして、「出産後の不安や体調管理をサポートしてくれる人や施設があればいいな」と多くの妊産婦さんは感じています。
実際に厚生労働省が2019年に発表した「妊産婦にかかる 保健・医療の現状と関連施策」によると、産後2週未満の方が「今回の妊娠・出産・産後期間に感じた不安や負担は?」という質問の回答で最多が「自分の体のトラブル」で56.1%、という結果が出ています。
参考)2019年 厚生労働省「妊産婦にかかる 保健・医療の現状と関連施策」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000479245.pdfそういった背景もあってか、「母子保健法の一部を改正する法律」が2021年4月1日より施行されました。
この法律は、市町村が予算事業として行っている産後ケア事業を母子保健法上に位置付けてすべての市町村で産後ケア事業の実施を努力義務化したものです。
通称「産後ケア法」では、出産後に心身の不調や育児に対する不安を感じているママと赤ちゃんに心身のケアと育児サポートを提供することで、不安なく子育てが行える支援体制を拡充することが目的となっています。
このように、産後院を含む産後ケア施設は、出産後のママと赤ちゃんの心と健康を守りサポートしていく大切な役割を担った施設といえるでしょう。
産後ケア施設のスタイル
助産師や保健師、看護師を中心に専門的な知識を持つ人がママの体を休ませながら、子育てに関するサポートを行ってくれる産後ケア施設は、大きく3つのスタイルに分かれます。
デイサービススタイル
滞在時間は、施設に6~8時間程度になりますが、ママの心と体のケアや保健、栄養、授乳指導、育児相談、アドバイスなどを受けることができます。
滞在施設は、自治体や運営会社によって違いますが、ホテルを利用してサービスを受けられるようになっているところもあります。
この施設に滞在してママの心と体のケアや赤ちゃんの健康チェック、ベビーマッサージなどを行ってもらえるほか、赤ちゃんを預かってもらい個室でランチをゆっくり楽しむなどの休息を取ることも可能です。
施設によってはママが滞在する部屋にハーブティーやフェイシャルスチーマー、マッサージ機などが備え付けられているので、ママがのんびりとした時間を過ごすことができます。デイサービススタイルには、個別型と集団型があります。
【個別型】
個別に対応して、その人に合ったケア
【集団型】
複数の利用者がグループで指導やケアを受けることが可能。同じような環境のママと知り合うことでストレス解消に繋がる効果も見込める
宿泊スタイル
出産後のママと赤ちゃんが施設に宿泊しながらサポートを受けるスタイルです。
デイサービススタイルと違い、1日を通してママや赤ちゃんの様子がわかるので、より深いケアを受けることができます。
個室対応している施設やパパも一緒に滞在できる施設、長期滞在できる施設などがあるので、状況に応じて選ぶことができます。
また、産後間もないママが辛く感じる夜中の授乳もサポートしてくれるので、疲れがたまっているママもぐっすり眠ることができるでしょう。
宿泊スタイルの場合は、24時間体制で専門スタッフが常駐しているので、授乳や赤ちゃんの寝かしつけなどの相談もできます。慣れない育児で不安を感じているママにとっては、心強い味方になるでしょう。
アウトリーチスタイル(訪問型スタイル)
利用するママの自宅に専門スタッフが訪れてケアをするスタイルなので、家から出たくないときに安心して受けることができます。
例えば、助産師が訪問して乳房マッサージを行ってくれるなど、本来であれば病院などで行ってもらう施術も自宅でお願いすることが可能です。
産後ケア施設で受けられるサービス
では、産後ケア施設では、どのようなサービスを受けることができるのでしょうか。
母体ケア
出産後のママの体調管理と健康チェックを行い、産後の回復に必要な休息が取れるようにサポートします。
具体的には、ママが安心して食事やバスタイム、仮眠ができるように赤ちゃんをスタッフが一時的に預かることやママが感じる体の悩みに専門のスタッフがアドバイスを行うなど、ママの負担を最小限に抑えるようなサポートを行います。
乳児ケア
もちろん、生まれたばかりの赤ちゃんのケアも忘れてはいけません。
赤ちゃんの健康チェックや体重測定、お昼寝などで生活リズムを作りやすくなるようなサポートのほか、ミルクの量や赤ちゃんのミルクを吸う力、授乳の姿勢などもチェックします。
育児相談や指導
赤ちゃんを育てていく上で感じる悩みや不安を和らげるために専門スタッフがケアをしていきます。
ほかにも「ミルクの与え方がわからない」「沐浴の仕方がわからない」などの疑問にも経験豊富なスタッフがわかりやすく答え、赤ちゃんとの生活に必要な育児スキルを上げていけるようにお手伝いをしてくれます。
その他
自宅での育児について、パートナーや家族も含めてコンサルティングを行い、周囲の理解を深めてママの負担を軽減できるようにサポートします。
また、ケア施設を利用するママ同士の交流会といった機会を作ることで、孤独になってしまいがちな育児を変えていけるようにケアすることも可能です。
ほかにも、施設によっては、整体やマッサージ、骨盤ケア、エステ、ネイルケア、ヘッドスパ、ベビーマッサージ、ベビーヨガなどの施術、赤ちゃんとママが楽しめるイベントを行っているところもあります。こういった施術やイベントは、民間運営の産後ケア施設、産後ケアホテルに多く見られます。
いずれの施設も、ママと赤ちゃんの心身ケアを一番に考えたサポート体制とサービスを整えています。
産後ケア施設を利用するには
では実際に産後ケア施設を利用するにはどうすればいいのでしょうか。ここでは市町村の運営と民間による運営の2つに分けてご紹介します。
市町村運営の場合
まず、市町村が運営する産後ケア施設を利用する場合は、市町村によって定めている利用条件を確認することが大切です。
ママの希望によって利用が申し込める施設もありますが、保健師や助産師などの専門家の意見書が必要な場合もあります。
また、産後ケア施設の利用者は、産後のママとその赤ちゃんが原則となっていますが、施設によっては、上の子どもやパパも一緒に宿泊可能です。
ほかにも、宿泊やデイサービススタイルの施設の場合は、利用日数を制限しているところもあります。
例えば、横浜市の場合は、宿泊、デイサービスいずれも利用上限日数は7日間と決まっており、利用日数は産後の援助の必要性を確認して区福祉保健センター長が決めるとしています。
いずれにしても、各産後ケア施設を利用したいと考えたときは、住民票のある市町村の窓口で確認する必要があるでしょう。
民間運営の場合
一方、民間企業が運営する産後ケア施設、産後ケアホテルを利用する場合は、基本的には自身でネットなどを使用して施設やホテルを探すことになります。全国の産後ケア施設を検索できるサービスもあるので、上手く活用していきましょう。
いくつかピックアップができたら、各施設の見学会や説明会に参加してみましょう。どういったサービスがあるのかという情報収集や、利用日数などの相談をしっかり行い、具体的に利用のイメージを作ります。
基本的に民間による産後ケア施設は、利用上限日数を設けていないため、ママが希望する期間でゆっくり過ごすことが可能です。
産後ケア施設の料金
ママと赤ちゃんのための産後ケア施設ですが、気になるのは料金です。
市町村の産後ケア事業の場合
市町村が行っている産後ケア事業の場合は、利用できる施設が自治体によって決まっていますが、宿泊で1泊3,000円~12,000円程度、デイサービスの場合は、1,000円~4,000円程度の負担が一般的なようです。
例えば、横浜市の場合は、1泊6,000円(昼食2回、朝食・夕食各1回付き)2泊目以降は1泊3,000円、デイサービスの場合は、8時間、昼食付きで1回2,000円の負担となっています。
また、市民税非課税世帯や生活保護世帯は、利用料の免除や減額措置もあるので確認してみると良いでしょう。
民間運営の産後ケア施設の場合
民間運営の産後ケア施設は、1泊2日で30,000円~60,000円程度と利用する施設やサービスによって料金に幅があります。
「産後ケア施設で受けられるサービス」でご紹介したように、民間運営による産後ケア施設では整体やマッサージなどのサービスを受けることができます。
また町村の産後ケア事業の場合は、申請を出しても受理・承諾されず、利用ができないケースもあります。一報民間運営の産後ケア施設・ホテルの場合は、そういったケースは基本的にありません。
まとめ
周囲からのサポートがないと産後のママは、肉体的、精神的にも大きな不安や不調を抱えているのに待ったなしの育児に追われて辛い日々を過ごすことになります。
そんなときは、お住まいの地域にある産後ケア施設を積極的に頼ってみてはいかがでしょうか
どのような手続きを取れば良いのかわからないときは、保健師や市町村の窓口で相談してみてください。産後ケア施設は、ママと赤ちゃんが健やかな毎日を過ごせるようにサポートしてくれるはずです!